校長 その日その日
Principal Day by day
Principal Day by day
2023/01/06
本日6日(金)は中学生・高校生とも新年最初の登校日。1時間目の「開始集会」で、次のような校長講和を行いました。
―――(要約)
正月、ご家族と一緒に食事を囲んだことと思う。食事で栄養を摂るということが、ヒトの「脳」の進化のために欠かせない営みであったと、正月中に私が読んだ更科功さんの本『絶滅の人類史』であらためて感じた。
ヒトの脳は、進化の過程で、摂取カロリーが高くなったときに大きく発達したという。
700万年前、ヒトが類人猿(チンパンジー類)から分化した段階(猿人)では、脳の容量はチンパンジーなどと変わらず、350cc(缶ジュースぐらい)。
それが約200万年前、原人段階になると、約1000cc(牛乳パック1本分)まで大型化した。なぜか?
それは「これ」(実物の石器を持って見せる)の使用が始まったからだ。そう、石器の使用で狩猟が効率化し、植物食中心から日常的に肉食が可能になったからだ。(※注)
※注 見せたのは厳密には狩猟用石器ではなく、植物食加工用石器「たたき石」(縄文中期:約4000年前)
ヒトの脳は、とてもエネルギー効率が悪い。重量は体重の約2%しかないのに、消費エネルギーは20~25%も占める。
つまりヒトは、石器の使用で肉食=高カロリーの食事が日常的に摂れるようになり、おかげで脳が大型化した、ということだ。
しかも肉食は、植物食よりも消化が早く、当時火の使用も始まったことから、焼くことでさらに消化が良くなる。植物食だったら消化時間は体を動かせなかったものが、早く次の狩りに出られるようになる。つまり火の使用も狩猟の効率化を促した。
あとは「脳が大型化する」→「より高度な石器が作れる」→「狩猟や調理法が向上する」→「余暇ができ、集団コミュニケーションの発達、知的活動」→「また脳が大型化」…と進化し、現代のわれわれ新人(ホモ・サピエンス)の脳は、約1350㏄(缶ジュース+牛乳パック1本)にまで発達した。
だから、朝食を抜いたり無理なダイエットというのは、「700万年の進化の歴史」に逆らうことになる。猿人段階の脳に戻りたい人は別だが(笑)。
今年もいろいろ学習が忙しくなるだろう。しっかり栄養を摂って、脳と体のパフォーマンスを最大限に発揮できる一年にしてほしい。さらにこういった本を読むような、知的活動を充実させよう。せっかく1350ccある脳をもっているのだから。
(ここでの追記)
更科 功著『絶滅の人類史』(2018 NHK出版新書)には、ほかにも「なぜヒトが二足歩行を始めたか」や、われわれホモ・サピエンス以前に生息していたネアンデルタール人との関係についても興味深く書かれています。
ご一読ください。