校長 その日その日

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2023/08/30

(8/30)ペダルと牛乳と

私事で恐縮ですが、毎年夏にいただく休暇で、自転車で奥日光を100㎞ほど周回するのを恒例にしています。

コース途中の霧降高原では、標高約1000~1300mあたりに「大笹牧場」というところがあり、よく牛たちが長閑に群れています。

急坂に喘ぎながらペダルを踏む自分とはあまりにも対照的で、汗だくになりながら苦笑してしまいます。

 

数日後、あるウェブニュース記事が目に留まりました。それは「一滴でも牛乳を多く消費してほしい」というもの。牛乳価格が昨年から断続的に値上げとなり、乳業メーカーが消費者の「牛乳離れ」を心配しているのだそうです。

 

あの牧場の牛たちを思い出し、それではメーカーではなく生産者である酪農家は、今どんなことで困っているのか、大笹牧場を管轄する栃木県酪農業協同組合さんに、直接電話で聞いてみました。

やはり厳しい状況が伝わってきます。

 

❶飼料の高騰 …折からの円安・ウクライナ事情により、輸入に頼っている飼料が高騰し、コストを押し上げている。

 

❷電気代・ガソリン代の高騰 …牛は暑さがダメで、牛舎の扇風機をフル稼働させるのだが最近の電気代の高騰が困る。また牛乳を輸送するのにもガソリン代の高騰が困る。

 

➌牛乳価格には簡単に転嫁できない …生産段階のコストは、上部団体との絡みもあって簡単に牛乳価格に転嫁できない。現在は1ℓ:200円以上じゃないと割に合わない。かといって牛乳以外の加工用(=脱脂粉乳とか乳製品用)に回すと、牛乳より安く買いたたかれてしまう(!)。

 

❹牛乳以外の活路も難しい …乳牛に肉牛を交配させて食肉を売る方法もあるが、輸入肉の安さにはかなわない。

 

――「だから酪農やめようかって人が多いんです。新たに酪農始める人がいたとしても“牛を飼って放牧すればすぐ利益”ってわけじゃないですからね」(担当の方)。

 

牛乳値上がり →飲まれない →酪農家廃業 →さらに値上がり…?負のスパイラルは想像に難くありません。

 

本校の中1生は、6月のサマーキャンプで酪農体験をしてきました。短い時間ではあっても、生き物が私たちの食になるまで、どれだけ多くの人の手間がかかっているかをあらためて実感したことでしょう。

 

牛乳に限ったことではないですが、スーパーの商品棚の前では、私たちは値札ばかりでなく生産者の顔も思い浮かべたいものです。

食のグローバル化は時代の趨勢としても、日本の生産者がもっと笑顔になれる方法はないものか。SDGs課題ですね。

 

拙宅でも牛乳は結構消費するのですが、あの牛たちに毎年会えるように、もう1本余分に買おうかどうか……皆さんのお宅ではいかがでしょうか。

 

NHKニュースウェブ:WEB特集8/21「コップ半分、いや1滴でも」8/29閲覧(外部リンクへ)