校長 その日その日

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校長 その日その日

 

2024/12/11

(12/11)中東に再び、思いを馳せる

11日(水)、中学高校とも後期中間テストが始まりました。来週月曜まで4日間、頑張ってほしいですね。

 

さて本校とは直接の関係はないのですが、私個人は昨今の中東シリア情勢を感慨深く眺めています。

 

2011年に中東で"アラブの春"という民主化運動が起きるも、シリアではその運動が独裁政権から長らく弾圧されてきて、しかしついにその政権が崩壊した、というニュースです。

 

なぜ感慨深いかというと、私がかつて授業(日本史)でそれに関する新聞記事を使っていたからです。

 

↓ ちょうど11年前でした(朝日2013.12.5朝刊)

シリアは世界遺産・パルミラ遺跡などがあることによる日本人観光客の増加、またアニメへの関心も高いことから、シリアの名門大学・ダマスカス大学に「日本語学科」が設けられ、日本に留学生を送るなど、日本語学習熱がとても高い国「でした」。

 

それが冒頭の弾圧でシリアは内戦状態になり、同大学はとても日本語教育どころではなくなってしまった、しかし懸命に学生は学び続けている…というのがこの記事の段階。

 

私が記事をどのように授業に使っていたかというと、記事中の大学の補助教員・ハイサムさん(当時25)が語ったことばです(一部記事引用)。

 

――「必ず日本に留学して、将来は日本文学の研究者になるのが夢」

(一番好きな万葉集から、次の歌をそらんじた)「"韓衣からころも 裾に取りつき 泣く子らを 置きてそ来のや 母なしにして"(防人服の裾に取りすがって泣く子供たちを(出征するために)置いてきてしまった。あの子たちに母親はいないのに)」※万葉集・巻20 4401番 防人さきもり歌

「この歌はシリア人の心、私の心と同じだ」――

 

――遠い中東の国で、日本の古代文学を学んでいるだけでもすごいのに、さらに自分のの危険を歌に重ねることができるって、すごくないか? こういう人たち・この国に、日本の私たちは無関心でいるわけにはいかないよね、と授業で話した記憶があります。

 

まさか15年近く内戦が続くとは…現在、シリアの教育事情はさらに悪化しているに違いありません。実際、同大学では日本語学習は中断され、日本語習得者も世界各地に難民として散らざるを得なくなっているようです。

2017市嶋典子「シリア出身の日本語学習者の日本語に関する意識とシティズンシップの動態」

国際交流基金 – シリア(2020年度)

 

またシリアでは、現政権が倒れたところで政情不安が続くという見通しも(2024.12.10朝日・毎日新聞など)。

 

日本文化のよき理解者・記事のハイサムさんは11年経って今、どうしているでしょうか。

そして2024年の今、私たちはどれだけ、世界中の銃弾の下にいる人たちに思いを寄せているでしょうか。

 

奇しくも昨日(10日)はノーベル平和賞の授賞式。受賞団体のお一人が涙を流しておられました。

それは決して歓喜などではなかったと。

「こういうことで受賞する人間が、二度と出ないように」というお気持ちもあったのではないかと、私は勝手に想像しています。

 

80億に思いを致せる人間を―は、私が校訓「愛 知 和」の「和」に読み取る心です。