校長 その日その日
Principal Day by day
Principal Day by day
2023/02/03
2月、寒い日が続きます。屋内で過ごす時間が長くなり、生徒も保護者の方も、ふと気が付くと手にスマホ、になっていませんか。
図書室の科学雑誌『Newton』1月号で、「スマホと脳の最新科学」という記事がありました。やはりそうか、と思う内容が多かったです。
(1)スマホ読書は読解力が低下しやすい
国内の大学の実験です。被験者に小説を本かスマホで読んでもらい、読後に小説に関する質問を行ったところ、正答率は本組よりスマホ組のほうが半分近く低下する結果が出たそうです。
原因は、スマホのブルーライトが脳の前頭前野(=記憶や学習をつかさどる)を過剰に活性化させてしまうためとみています。電子図書とはうまく付き合わなくてはいけませんね。
(2)「近くにある」だけで集中力が低下
「使ってなければ問題ない」わけでもなさそうです。米国の大学の実験で、スマホを音や振動が出ないようにして、①机上に置く、②カバン・ポケットに入れる、③別の部屋に置く、の3グループに分け、記憶力・集中力をテストしたところ、①が最も悪く、③が最も良かったそうです。
スマホが近くにあるだけでも集中力が削がれ、認知機能が落ちるためとみています。
本校生は家では③のはずですから心配ありませんが、ただし①では「スマホのヘビーユーザー」は意外に影響を受けず、「あまり使わない人」のほうが妨害されやすいとも。だから本校生はより注意が必要です。
(3)「テクノフェレンス」=子の発育への悪影響
目の前に我が子がいるが、親はスマホに夢中――もはや珍しくない光景。
これも米国など各国の大学の実験結果ですが、0~5歳の子をもつ親が、スマホ使用に気を取られることによって、子の感情面・語彙や言葉の発達に悪影響が出る。これをテクノフェレンスというそうです。
よくある場面では、子を公園・自宅で遊ばせているとき、電車・バス内、授乳中など。
テクノフェレンスは、発達期の子への親の注意力低下、親子の対話の中断が原因とみています。
さらに親のスマホ依存は、子が青年期になったときに子も依存になりやすいとの結果もあるそうです。
私も個人的には、“子どもなんてあっという間に大きくなってしまうのに、毎日毎日の仕草を目に焼き付けておかなくていいんですか?”と、見かけるたびに胸の中で感じていました(今の自分だから分かるのですが)。
「大宮開成の校長は懐古主義か」というわけではなく、教育でもICTはもはや積極活用の時代。新技術の普及時に摩擦はつきもの(ただしスマホの革新性は桁違いですが)だと思います。テレビが普及し始めた1960年代だって「テレビ亡国論」がありました。
大切なのは単純に、機械や技術に「使われない」こと、“オマエごときになぜ使われなくてはならないのだ”という心を忘れないことだと思います。
人間が機械や技術に「使われた」とき何が起こるかは、昨今の事件やこれまでの歴史が、痛いほど語っていますので。
参考:『Newton』2023.1月号 ニュートンプレス社