校長 その日その日
Principal Day by day
Principal Day by day
2022/06/30
去る奈良京都伝統文化研修の引率において、3日目の京都班別行動の日、私は市街の北にある大徳寺を訪ねました。
大徳寺は臨済宗の禅寺で、室町時代に一休宗純(いっきゅうそうじゅん1394~1481。いわゆる一休さん)が住持した寺です。
室町時代当時、禅寺のなかでも「京都五山」※が幕府に厚く保護され、文学・書画などの文化サロンとなって繁栄するのですが、肝心の宗教活動は疎かになってしまいます。
しかし一休さんの大徳寺は、五山のような“セレブの禅寺”からあえて外れ、庶民のために布教する異色の寺となったのです。
ところで、大徳寺はとりわけ大仙院というお堂の「枯山水」(かれさんすい。木や岩・砂だけで山水を表現する庭園)が有名です。私が訪れた時間は比較的すいていたのか、案内のかたが丁寧に説明をしてくれました。
「あそこの岩が山水の流れ出す滝。初めは生まれ出た生命のように勢いよく流れ出ます」
「しかしお堂の壁が流れをさえぎります。まるで人生の壁」
「壁をくぐった流れは穏やかになって、宝船(=舟形の岩)が浮かびます。苦労の後の喜びのよう」…。
なるほどと感心しながら見終え、絵葉書を買って辞去しようとすると、そばにいたご住職が「あなたのお名前をサインします」と絵葉書の箱に書いてくれました。
後日分かったのですが、そのかたはご住職の尾関宗園さん(90)だったのです。
宗園さんは処世訓について多数の著作を出されていて、上の枯山水の解釈も宗園さんによるものでした。
また、堂内に掲げてあったこの言葉。
今こそ出発点
人生とは毎日が訓練である
わたくし自身の訓練の場である
失敗もできる訓練の場である
生きているを喜ぶ訓練の場である
今 この幸せを喜ぶこともなく
いつ どこで幸せになれるか
この喜びをもとに全力で進めよう
わたくし自身の将来は
今この瞬間 ここにある
今ここで頑張らずに いつ頑張る
もちろん宗園さんの言葉です。
日頃、私たちは今自分があることへの感謝を忘れ、慢心しがちですが、この言葉はそれを省みさせてくれます。
これは私に向けられた言葉だと、真っ直ぐ突き刺さりました。
一休さんから続く大徳寺のご住職らしい、人の心に寄り添った言葉です。
まもなく祇園祭の佳境を迎える京都。今年は山鉾巡行が復活するとのこと。
もし皆さんが京都を訪れるときは、ぜひ大徳寺さんに立ち寄ってみてください。
※上位から天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺。さらにこれらの頂点に南禅寺をおく