校長 その日その日

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校長 その日その日

 

2024/07/23

(7/23)夏、本物に触れアンテナを高く―終了集会(中学)

22日(月)、夏休み前の正規学校活動を終え、中学・高校とも終了集会を実施。今回、中学の講話はちょっと変化球を用意しました。

<中学>

皆さんはカブトムシを捕まえたり飼ったりしたことがあるだろうか?

私は小学生の頃、カブトムシを夢中になって飼っていた。大人になっても、子どもが小さいときに親の自分のほうがよく世話をしていたぐらいだ。

 

学校図書館に『カブトムシの謎を解く』という本がある※。

小島渉さんというまだ若い山口大学の先生の本。小島先生によれば、カブトムシはあまりにも身近過ぎて、これまであまり学術研究の対象にならず、今も分かっていないことが多いという。

例えば、カブトムシは角のあるオスが人気だ。一般に自然界だと、角や体の大きい方が生存に有利なようだがしかし、角が小さくても有利、むしろ角や体が大きいことで不利な場合もあるそうだ。

 

また、一般にカブトムシは夜行性といわれてきたが、近年、埼玉の小学生の研究で、条件によっては真昼間も堂々と樹液を吸うことが確認され、小島先生のアドバイスを受けてその小学生は学術論文として発表し、世界から注目を浴びたそうだ。

 

そのほかにも、カブトムシの幼虫はなぜか集団で暮らし、さなぎになるのも集団でほぼ同時なこと/角が大きいオスはどういった環境で生じるか/スズメバチとカブトムシの関係性…など、この本には図鑑などでの「通説」とはちょっと違うカブトムシの生態が、いろいろ書かれている。

 

小島先生は最初から昆虫が好きだったのではなく、ただ自然の生き物とずっと触れあってきて、最終的に大学で「進化生態学」という学問に出会い、この道に入った。

だから皆さんも、本校のプレゼン教育で取組んでいるテーマを大切にしてほしい。何かしら興味があって取り上げたのだろうから、「これってなぜだろう」といった、少しの疑問もぜひ温め続けてほしいちなみに最近、国立科学博物館の収蔵庫の「ヤマイヌ」のはく製をニホンオオカミだと気づいたのも小学生でしたね)。

 

皆さんの先輩のなかには実際、プレゼンでのテーマを論文にして難関大学の合格を勝ち取ったり、のちのちの職業選択に影響したと言っている人もいます。

 

いっぽう、「興味関心の対象がない」という人は「アンテナを張ろうとしていない」「本物を見ようとしていない」だけかもしれない。

この夏の機会に、図書室・図書館で本に親しんだり、博物館や普段行けない地域に出かけるなどして、「本物」の刺激を受けよう。皆さん自身のアンテナを高く張り、よく磨いておこう。

『カブトムシの謎を解く』、中学生向けに書かれているからすぐ読めます。図書室へ。

※ちくまプリマ―新書